【府中市】「本物にふれる」体験を、子どもたちへ ― サゴイシオリさんと《しんぶんフードクラフト 夏のおやさい展》

府中市美術館に併設された「府中乃森珈琲店」では、2025年9月7日(日)まで、“しんぶんフードクラフト 夏のおやさい展”が開催されています。店内に一歩足を踏み入れると、新聞紙でつくられたカラフルな野菜たちがいっぱいに並び、訪れた人の目を惹きつけます。

この展示を手がけたのは、食とART「Today」主宰のサゴイシオリさん。個展の開催に先立ち、子どもたちと一緒にワークショップ「しんぶんフードクラフトで「夏のやさい畑」をつくろう!」を開き、その作品が今回の展示に使われています。

サゴイさんとの出会いは、今年4月。大東京綜合卸売センター内のAsianMealさんで開催されていた“アジアのくだもの展”がきっかけでした。手作業の温もりが宿るその作品からは、ただのクラフトにとどまらない、強いメッセージが感じられたのです。

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サゴイシオリさんのしんぶんフードクラフト”アジアのくだもの展”

●子どもたちも、立派なアーティスト
7月中旬に開催されたワークショップ「しんぶんフードクラフトで『夏のやさい畑』をつくろう!」には、20名近くの子どもたちと保護者が参加しました。この日のために農家さんからいただいた野菜たちは、畑で育ったまま、土のついた状態で店内にずらりと並びました。

畑のそのままの野菜を、直接触って観察しました

子どもたちは葉の重なりや色のグラデーションを丁寧に観察しながら、新聞紙に絵の具で色をのせ、握り、ねじり、貼って、見たままの姿を再現していきます。イメージではなく“目の前の本物”をじっくり見て手を動かすことで、いつしか夢中になっていく姿が印象的でした。
展示では、段ボールで作られた畑の中に子どもたちの作品が彩り豊かに並び、来場者を迎えています。

 

●「つくることが好き」-サゴイさんの原点
サゴイシオリさんは、幼い頃から“つくること”が大好きだったと言います。成長するにつれ、道具はハサミやのりから包丁やフライパンに変わり、料理という「手を使ったものづくり」へとつながっていきました。
大学では栄養学を学びながら、ケータリング会社でフードデザインを学び、「見せ方」や「空間ごと味わう食の体験」に惹かれていきます。

食とART『Today』主宰のサゴイシオリさん。お話をするだけで前向きな気持ちになれる、一緒に楽しみたいと思う魅力が溢れる方です。

“しんぶんフードクラフト”が生まれたのは、とあるワークショップのマルシェの装飾がきっかけでした。本物の野菜や果物の代わりに新聞紙で模した野菜を並べたところ、帰り際に子どもたちが「これちょうだい!」と嬉しそうに持ち帰っていったのだそうです。

「私と息子で作った分が全部なくなっちゃって。そのとき『あ、これは誰かに届けられるものかもしれない』と思いましたね」とサゴイさん。こうして、“しんぶんフードクラフト”のワークショップが始まりました。


●「本物に触れる」ことで変わる、子どもたちのまなざし
10年以上にわたりワークショップを続けてきたサゴイさんが、大切にしていること。それが「本物に触れる体験」です。
「材料は新聞や段ボールなど身近なものを使っています。モチーフになる野菜は、できるだけ畑で育っているそのまま、本物の状態を見せたいです。スーパーに並ぶ整った姿ではなく、葉や根っこがついたまま、土のにおいのする野菜を農家さんにお願いしていただいてます」

本物を見て触って、そのままを形にしていく贅沢な時間です

実際に触れて観察することで、子どもたちの目は変わります。色の違い、葉のかたち、小さな虫食い穴。観察対象の解像度がどんどん上がり、それがそのまま、作品の細やかさや集中力にもつながっていくそうです。

タマネギについている紐は、農家さんが収穫後に吊るして保存するため。こういったことを知ることができるのも魅力です。

サゴイさんが「子どもたちの“一生懸命さ”がまるで違うんです」と語る背景には、農家の人たちへの深い敬意があります。
ワークショップデザイナー、アート・コミュニケータなどであると同時に、生産者を取材し、言葉にして届けるライターとしても活動しているサゴイさん。農作業の現場で見て、聞いて、感じてきたこと、尊敬の想いが、ワークショップにも反映されています。


●子どもたちの「見て!」が生まれる瞬間
サゴイさんはワークショップの間、子どもたちの気づきやつぶやきを、積極的にシェアします。
「誰かの気づきを共有することで、『同じことを思った!』『そういう見方もあるんだ』と共感や発見が生まれます。人の感じ方に触れることは他者理解にもつながるので、特に意識するようになりました」

そうした空気の共有こそが、サゴイさんにとって“ワークショップのゴール”なのかもしれません。予定どおりにワークショップを終えることよりも、場の空気や経験を感じ合うことを大切にする。そうは言いつつも、200回以上のワークショップ実践で培われた、しなやかな余裕を垣間見ることができました。

先日開催されたいろみずワークショップでは、子どもがカエルを見つけたことで盛り上がりました。

ワークショップで印象的だったのは、「見て!」の言葉が多く聞こえたことです。
会場のあちこちから聞こえてくるその声は、子どもたちが“はじめてできた”ことを伝えるサイン。
「大人はあまり『見て!』って言わないですよね。それはもう経験しているから。でも子どもたちにとっては、人生で初めて“できた”を伝える瞬間なんです。親がそれを受け取る時間って、すごくあたたかいんですよ」


それはまさに、「すぐそばにある、あったかいものに気づくキッカケづくり」。サゴイさんの活動全体を貫く、食とART/Todayのコンセプトそのものです。


●これからも、つなぎ続ける
サゴイさんにこれからの活動について伺いました。
「これからも、そのときの状況でできることを120%の力でやっていきたいと思っています。
それは、私ひとりの力ではなく、農家さんの想いを背負っていたり、これまでお世話になってきた人たちへの恩があったり――たくさんのつながりに支えられているからなんです。農家と消費者、親と子、地域と人。今までの出会いに感謝しながら、また新しいつながりを作っていきたいです。」


本物にふれ、想いを受け取り、分かち合う。
その橋渡しを、丁寧なコミュニケーションと場づくりで叶えていくサゴイシオリさん。
心がふっと温かくなる“しんぶんフードクラフトのワークショップ”は、これからも各地で開催予定です。

最新情報はInstagramで随時発信されています。気になった方は、ぜひチェックしてみてください。
あなたのすぐそばにも、“あったかいものに気づくキッカケ”が見つかるかもしれません。

 

しんぶんフードクラフト 夏のおやさい展
2025年9月7日(日)まで、府中乃森珈琲店(府中市美術館併設カフェ)にて開催

府中乃森珈琲店はこちら↓

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